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第八回:「他人のせいにしないこと」

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かなり昔の話ですが、あるタイトル戦の予選でこんな話がありました。予選の最終半荘、ある若手プロは既に予選通過が確定していました。同卓していたあるベテランプロは、トップを獲れば予選通過という条件付きの状況だったのです。

オーラスを迎えベテランプロが僅差でトップ目、 若手プロは2着目、その差2000点以内という接戦でした。 3着目のリーチを受けてベテランプロは、放銃するわけにもいかず、結局テンパイにとることができませんでした。若手プロは放銃しても予選通過ですから、無邪気に無筋をバンバン押してテンパイ宣言。ベテランプロのトップをまくって予選の最終半荘が終了しました。

終了後、ベテランプロは顔を真っ赤にして若手プロにこう言いました。

ベテランプロ「オイ!おまえテンパイする必要ないじゃないか!そんなのありえないだろ――」

さて、みなさんはこれを聞いてどのように思いますか?





麻雀は一つの選択によって誰かが有利になったり、他の誰か不利になったりするゲームです。他家の放銃によって自分のチャンス手を潰されてしまったり、他家の放銃によって自分の着順が下がってしまうこと。人の選択によって、自分が不利益を被ってしまうことはよくある話です。

またその逆も然り、他家の放銃によって自分のアガリが成就すること。他家の放銃によって自分の着順が上がること。人の選択によって、自分が有利になることだって同じように数多くあるはずなのです。

ある選択をした結果、誰に対しても全く有利ならず、誰に対しても全く不利にもならない。全員に対して全く影響を与えない選択は、麻雀というゲームでは存在しないと考えるべきなのです。

確かにベテランプロは若手プロの選択によって敗退してしまいました。若手プロはどのように打っても予選通過ですから、3着目のリーチにベタオリさえしていれば、ベテランプロも予選を通過できたことでしょう。確かにその卓内ではそうです。しかしそうしてしまうとその割を食って、卓外にいる通過ボーダー付近の誰かが予選を通過できなくなってしまうのです。



ベテランプロ「オイ!おまえテンパイする必要ないじゃないか!そんなのありえないだろ――」

というのは、決して若手プロのためを思って出た言葉ではありません。

ベテランプロ「おい!おまえ何故オレに対して不利に打つんだ??」

というのが本音でしょう。ありえないのは若手プロの打牌選択でしょうか?全然違いますよね。本当にありえないのは、何十年と競技麻雀の世界に身を置いているのもかかわらず、麻雀のゲーム性を正しく理解できずに、敗退したことに対して若手プロに文句を言ってしまうベテランプロの性根なのです。

そんなのありえないだろ――

みなさんも他家の選択によって不利を被った時、そういう気持ちになったことはありませんか?大の大人がこんな発言をしていたら、本当にみっともないですよ。




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